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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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なぜそう鈍いんだ(同居クレトム12)

久しぶりのクレトムです。平和な淡々話です。(このシリーズみんなそうだけど)



「くっそ・・・」
トムは呻いてマウスを放り出した。

ここしばらくの株式市場は世界的に下げ一方だ。外出を避けたいトムの、ささやかな収入源であるネット取引だが最近は負けが込んでいる。
今日もロスカットぎりぎりまでの下げで、損切る決断もできないまま、取引時間が終わってしまった。

「うう」
あきらめてパソコンの電源を切り、キッチンのテーブルからどかす。
ため息をついて、冷蔵庫を開けた。再び呻く。萎びかけの野菜とミネラルウォーターしかない。
この内容でまともな夕飯が作れたら、それはそれで一芸として売れそうな気がする。
ぐるりと室内を見回すが、もちろん紙幣が落ちてるなどということもなく、トムはあきらめてしばらく使っていなかった引き出しを開き、キャッシュカードを取り出した。


一気に秋の気配が強くなってきた街は、上着を着ないと肌寒い。
少し肩をすくめて歩きながら、トムは(もう少し寒くなったらマフラーか帽子を買おう)と心の中で予定した。願わくば冬までにはもう少し勝率が上がらんことを。
銀行に入るとATMにカードを入れ、暗証番号を押す。少し考えてから「残高照会」を選んだ。
表示された数字を見て、眉を曇らせる。
やっぱり。
明らかに最近クレイは支出を抑えている。


『どうせ大して入ってないから、持ってて』
と、渡されているカード。この街で暮しだして最初の頃は、それこそ月末には最低預金額を下回ることもざらだった。
半年もたつと何とか落ち着いて生活できるようになった。が、ここしばらくの金の動きはどう考えても控えめだ。
何かわけがあるのか、とも思うがクレイが何も言わない以上、相手の金使いにあれこれ言う筋合いもない。そんなことをしだすと、ますます・・・自分の立ち位置が妙なことになりそうだった。
とにかく居候の身としてはせいぜい自分も稼ぎ、なるべくクレイの金に手をつけないで過ごしたいと思うのだ。


 

最小限の金額を引き出してから、ちょっと考える。
トムにも、実は貯金はある。しかも結構な額が。ただし本名で持っているその口座は警察にチェックされている可能性が高いので使っていない。
旅をしている時、どうにもならなくなるとそこから金を出し、そのたびにできる限り遠くへ移動していた。
クレイと同行するようになってからも、それが理由で突然無茶苦茶な移動をすることがあったが、クレイは何も聞かず当たり前のような顔をしてバイクでついて来たものだ。
 

じっとATMを見つめる。
正直、今引き出した金額だけでは、諸々の買い物を考えると心細い。
クレイがコツコツ貯めているらしい貯蓄を減らすのも心苦しい。
だが、
もう身一つで移動を繰り返していた頃とは違う。
「悪いな」
小さく口の中で呟いて、トムはもう一度カードをATMに差し込んだ。

 


「・・・・で、何とか俺の口座から金を移動する方法が無いかとか考えてたんだけどな」
夕食後、皿を洗いながらなんとなく話したら、後ろでクレイが拭いていた皿を派手に落とした。
「クレイ?」
少し慌てて振り向くと、血相を変えたクレイにがしっと両肩をつかまれる。
「なにかしたの!?トム」
「え」
「警察の手配とか、口座のことで何かしたの!?」
「え、いや・・」
「怒らないから・・いや、驚かないから言って!」
「いやもう、お前驚いてるだろうそれは」
「頼むから言ってくれ。何したんだ!」
「・・・・・お前の口座からあと20ドルおろした」
俺は今日どうしても肉の気分だったんだ。洗剤もなくなってたし。


言った途端、クレイがどっと脱力して肩にもたれかかってくる。
「よ・・・・よかった・・・」
がっくり疲れている背中を叩いてやりたいが、あいにくとトムの両手は泡だらけだ。
「落ち着けよ」
「だって、この間のこともあるしさ」
「・・・・・」
顔を伏せたまま、クレイが言う。トムは「あー、」と天井を見上げた。
先月、取引で損を出してしまったトムは、酒場の店員に教えてもらった単発バイトで穴埋めをしようとしたのだ。


トムいわく
「店の手伝いに行くけど。座ってるだけで大してすることないらしい」
どれどれとクレイが様子を見に行くと、バイトは怪しげな地下クラブのショーだった。ダンサー達のど真ん中に座らされているトムを見て、それこそ血の気が引く思いをしたのだ。
結局1回で、あっさりトムはバイトを辞めたのだが。


「・・・でも、あれは楽だったぞ。顔も隠してたし、ただ座って手をこう振るだけであの時給!」
トムは流しの上でぴっぴっと泡を振り払うように手を動かす。
「・・・・・」
舞台のトムは軍服軍帽サングラスの衣装で、確かに隠れてる部分は多かったが端正な貌は丸わかりだ。客席の連中の顔を見ていたが、賭けてもいいがあと数日バイトしていたら、もっとやばい出し物方面まっしぐらだっただろう。
 

トムからすると「とりあえず違法行為は避けてる店だから大人しい方じゃないか」「やばそうになったら暴れて逃げればいいだろ」というのだが、なんでそう危険な状況に鈍いんだ、とクレイとしては叫びたくなる。
『変な場所に売リ飛ばされたらどうするんだよ!』
『お前、考えすぎだぞ。さすがに多少見た目が良くてもこの歳じゃ売れないって』
『世の中には今ぐらいのあんたがいい奴も絶対いるの!!』
あの時は珍しく喧嘩になったのだ。惚れた欲目の過保護バカと言われてもいい。逃亡者の癖に、時々ぱかっと警戒感の欠けたことをするこの坊ちゃんをどこか安全な場所にしまっておきたい。


「頼むからトムの口座には触らないでよ。僕もトムが好きに肉買えるくらいの給料はあるんだから」
「分かってる。裏の連中の方が俺を知ってる可能性も高いし。・・・でもお前、最近なんか切り詰めてるだろ」
後ろ手にタオルを探し当てて、濡れた手を拭いた。肩に額を押し当てていたクレイの髪にそっと触れる。
「働いてるお前が使ってないのに、俺が使うのはやっぱり悪いよ」
すると、はじかれたようにクレイが顔を上げた。
「何言ってんの?あれエアコン代だよ」
「え?」
「トムが暑いって言うから…」
「あ・・、でも」
「・・・うん、わかってる」
そう、エアコン代がたまるよりも夏が去る方が早かった。
「来年、暑かったらすぐ買えるな」
トムが笑うとクレイも少し情けない顔で笑った。
シーズンオフの今のうちに買っておこう、とは二人とも思えない。次の夏にここにいるかは、あまりにも遠く不確実な話だった。

「・・・」
「・・・」
何となく黙って見つめ合う。
「言っとくけどトム。また生活費のかたを身体で払う発想とかしないでよ」
真剣な顔で言ったら噴き出された。
「ばあか、しないよ」
「だってさ」
唇を子供のように尖らせている自覚がある。ガキくさいと言われようとも嫌なものは
嫌だ。

「そしたら、俺今日自分の部屋で寝るな」
「え」
穏やかな顔で、思いがけないことを言われた。
トムはそのまま流しに向かい、中断していた皿洗いを再開する。
「なんで?怒ったの?」
慌てて後ろから覗き込むと、きょとん、とした顔で見つめ返された。
「そんなわけないだろ」
「でも、急にさ」
「確かにお前に悪いな、とは思ってるし。少し一人で考えたいだけだよ」
「そう・・」
きっかけを作ったのは自分なのがわかっているので、クレイも今日は粘りづらい。
片付けの後は、テレビを観たり一杯飲んだりして二人でリビングでゴロゴロ過ごしたが、寝る段になるとトムは前言どおり「おやすみ」と軽いキスを残して、自室に引き上げてしまった。
クレイも今日はあきらめて自室に向かう。

 

 


夜中。
そっと触れる気配を感じてクレイが目を開けると、目の前にトムがいた。しかもベッドのクレイにのしかかる格好で。

そして顔が近付き、ゆっくりと耳元にキスが落とされる。

瞬間、クレイは固まった。

もしかして。
今日の会話のあれこれから、またトムの摩訶不思議な思考回路が働いて、ついに「上」がやりたくなっちゃったんだろうか。

どうしよう。
いきなり突きつけられた究極の選択。受け入れられるのか自分。

「なあ」
究極の選択に固まるクレイに頓着せず、トムは頭を擦り寄せて来る。
なんとなく、その気配から察せられるものがあった。
 

「・・・いいの?」
小さく聞くと、コクリ、と頷く。なんでだかわからないけど一人でいたらさ、低い声が耳元で微かに笑う。
「したくなった」
そっと遠慮がちに伸びてくる指を、クレイは遠慮なく掴み取った。

 

 


翌日。
空は青く、鳥は高く、世は休日。


そしてトムは暗く落ち込んでいた。
ソファに転がり、雑誌を開いているが、全然進んでいない。


「トーム?」
「ん」
「どうしたの?どこか痛い?」
昼間にこういうことを聞くのはどうかとも思うが、それでもどこかが、と思ってしまう昨夜だった。どこもかしこも熱くて最高に気持ち良くて。理性が飛ぶというのはああいうのをいうのだ。


「いや・・・」
同じページをぼんやり開きながらトムが呟く。
「あんなことをして欲しくなるなんて、俺はカマになったのか。と思ってた」
「・・・・・」
「男なのに」
「・・・・・」
クレイとしてはコメントに困る。


そっとソファの側に腰を下ろす。そっと髪を撫でると微かに手に顔をすり寄せてきた。
「ま、抱かれたくなるなんてそうそうあることじゃないしな!」
頭をすり寄せながら吹っ切るように明るく言われたせりふに、今度はクレイが衝撃を受ける。


「そうなの!?」


「ああ。昨日が初めてだったから自分でもびっくりした」
「そう・・・」
まっすぐに綺麗な翠の目で見つめられて、クレイは物凄く複雑な気分になる。
「あ、お前はしたくなったら遠慮なく言えよ」
「・・・・うん・・・」


気を取り直してページをめくり始めたトムの襟元から、昨日クレイがつけた噛み痕がのぞく。
もしいまここで、もう一度身体中に噛み痕をつけたいと言ったら、トムはなんと言うのだろう。


だがクレイのふわふわした桃色の悩みは、
「これ、どう思う?」
と道路工事の日雇い仕事を指してくるトムによって吹き飛び、思い止まらせるために結構な時間を食ったのだった。

 

おしまい

 

えー、相変わらず平和なバカップル二人です。ほのぼのほのぼの。


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