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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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日暮れて四方は暗く(本編後エクソシストAU)

ムパラ45発行 本編最終話途中からのAUです。




鳥の声がうるさい。
サムが今住んでいる部屋の外には少し大きめの木があって、鳥たちの寝床になっている。突然の雨のせいだろうか、葉の擦れる音と鳥の鳴き交わす声がさっきからバサバサぎゃあぎゃあと続いていた。雨だぞと教えているのか、場所を譲れと揉めているのか。
窓を閉めると、騒がしい音は少し遠のく。雨も少し弱まったようだ。
サムは黒い上着を羽織り、鞄の中に今日の仕事道具をつめて外に出た。
 
当たり前のことだが、エクソシストは聖職者だ。
聖職者の中で強い信仰がある者が選ばれ、訓練や講習を受ける。
だから本来は神学も学んでいない、ハンター上がりのサムがなれるわけもないのだが、世界中が文字通りぐちゃぐちゃになっている現在、教団側の打算と、サムの利害の一致からその肩書を持つことになっていた。
なにせサム・ウィンチェスターが近づくと、悪魔が「逃げる」。
司祭たちが長期間かかって手に負えなかった悪魔憑きのいる部屋に、得体のしれないハンターが足を踏み入れた途端、悪魔の気配が消えるのだ。
信心深い信徒の前で何度かそういうことが起こった後、教会の威信に関わる、目障りだ異端だという声がある一方、それならばいっそ自分たちの方に取り込んでしまおうと言いだす者が出てきて、結果サムは即席の講習のあと神父服を着ることになった。
まだ日が浅いこともあり単独の仕事はあまり無く、多くは司祭の供という形をとっている。
若い後継者探しに苦労しているということもあるのだろう。いかに価値のある肩書といっても、どこの業界でも危険な仕事を希望する者は多くないのだ。


サムが車を降りる頃には雨は止んでいた。
年配の司祭と連れだって、古い集合住宅に入る。
「あれは間違いなく悪魔です」
依頼してきた地区の神父が迎えにでてきて、恐ろしそうに司祭に囁く。
「どうぞこちらへ」
案内されて階段を上がると、廊下にも近所の住民が不安そうな顔をして集まっていた。
「この家です」
扉の外からでも小さくすすり泣く声が聞こえる。
玄関の前で、司祭がちらりと視線を寄越すのにサムも小さく頷き返し、ノックに応えて開かれたドアに向かう。
微かに硫黄の匂いがして、サムは鼻をそっとこすった。司祭の後に続いてリビングから奥に入り、寝室の敷居をまたいだ途端に、黒い気配が部屋から消える。
「こんにちは」
「……こんにちは、司祭様」
穏やかな司祭の挨拶に、寝台に両腕を括られた青年がぼんやりとしながら答える。
「気分はどうかな」
「……よく、わかりません」
扉を開けた母親は真っ赤な目のままぽかんとした顔で立ちつくしていた。
「不思議なことだなあ」
あっけない悪魔祓いを終えて戻ってきた教会で、サムはお茶を振る舞われていた。司祭は穏やかな顔で首を捻りつつ、ちょいちょいサムに十字架や護符を向けたり、飲み物に聖水を混ぜてくる。サムも気持ちは分かるので気が済むようにさせていた。
「ほんとうに、僕にもさっぱり」
そう返すのは半分本当で半分は嘘だ。サムとしては自分の身体や魂にルシファーの気配が残っているか、いま地獄で大きな顔をしている魔女が何か印をつけるとかして下っ端の悪魔が逃げているのではないかと思っていた。
ハンターをしていた頃はごくごく格下の悪魔だって逃げたりしなかったのだから変な話なのだが、この頃では悪魔に対峙したとき、なんとも言い難い「力」の感覚が自分の中にある。色々な意味でサムを人間らしくさせていた兄の存在が欠けてから、サムは緩やかに人から違うモノに近づいているのかもしれなかった。
教会側もかなり怪しんでいて、サムを任命するかどうかの審議の時は、結構な人数の司教が集まっていた。
だが議場にサムが立った途端、部屋の中に七色の光がさし、音楽が鳴り響き、光の羽が周囲に舞い飛んだ。司教たちが呆然とする中でサムの側で付き添いをしていた司祭は、
「………大袈裟にしなくていいから……気持ちはありがたいけど」
とサムがぼそぼそ呟くのを聞いており、すわ奇跡か預言者かという騒ぎになり、それはそれでその後の聞き取りがめんどくさかった。
とにかく、サムは今「上」に対しても「下」に対しても顔が利く状態らしい。
ちなみに、別の日に同行した家では、同じように寝台にくくりつけられた少女はサムには目もくれず叫び続け、司祭はしばらく様子を見たあと、専門の医師に相談するよう地区の神父に伝えていた。
「そういえば君は結婚の話があったのではなかったかな」
「ええ、その予定でした。でもお互い考えなおしたんです」
「もしかしてこの仕事のために?」
神職は未だに独身者が多い。
「いえ、そういうわけでもなくて」
最後の家族を失って孤独だった時、同じような者同士で寄り添うことに惹かれたのだが、やることを見つけたとたん、自分でも現金すぎると思うがその意味が薄れたのだ。
 
「しょうがない男だわね」
サムの話を聞いて肩をすくめた元同業者の恋人は、
「いいけど、ムカつくから一発殴らせて」
と言って、体をかがめたサムを遠慮なく五発殴り、犬を連れて出ていった。
「ウィンチェスターの堂々巡りにならないでね」
というのが別れ際の言葉だ。
 
 
意外なことだが、このネット社会においても、悪魔に関しての情報はアナログな教会のネットワークが断然強かった。
サムが狩をしていた頃の感覚からすると、入ってくる情報の量は少なくても、信頼度が圧倒的に高いからだ。逆に言うとガセネタが少ない。
本来エクソシストは教会からの指示された場所に行くだけだが、サムは独自に活動することも認めさせていた。
そんな情報の一つをもとに、古いガレージの扉を叩くと、不愛想な初老の男が顔を出した。
「何の用だ」
歓迎はされていないなと思いつつ、サムは笑顔を作る。
「教会から来ました。ご連絡をありがとうございます」
そう言うと、ああ、と相手が腑に落ちたような顔になる。
「妙な奴がいると伝えたな。そのことか」
「そうです。どこで見ましたか?」
サムは話しながらガレージの中を見回す。
「知らん。勝手な時にきて、人のビールをくすねやがったり、仕事の邪魔をする奴だ」
「はあ」
話しながら部屋の中に入って、すぐに硫黄の独特な匂いに気が付く。そしてリビングの古いソファに探していた姿があった。
「くそ、また居やがった。おい!勝手に入り込むんじゃねえ」
止める間もなくずかずかとソファに近づいた男が、あ!と怒りの声を上げる。
「開けやがったな!俺のとっときだぞそれは」
見れば、サイドテーブルに封を切ったウィスキーの瓶がある。
「いつまでも埃かぶってるんじゃもったいねえだろうが」
からかうような声で言いながら起き上がった男は、背が高く、ダークブロンドで、サムが探していた姿そのままだ。ただ、眼だけが黒い。そしてサムを見て顔をしかめた。
「またお前か」
「サムだよ」
「知らねえよ。しつこいな」
肩をすくめているのに近づき、十字架をかざすと、黒い瞳が大きくゆがむ。
「笑っちゃうけどね、神の名において、こっちに来て、ディーン」
「やなこった」
「一緒に帰ろう」
「やだっつってんだろ」
動けなくなっている相手に近づきながら拘束具をだすと、横で見ていた男が胡散臭そうな表情になる。
「おい、お前本当に神父か?」
「教会から来たと言ったでしょう」
「何すんだそれ」
「捕まえるんです」
揉めているうちに背の高い姿が消える。
「あ、くそ」
サムは舌打ちをした。
「おい、あいつは何なんだ?」
邪魔をしてくれた相手に、サムは今度こそ遠慮なく嫌な顔を向ける。
「僕の兄貴ですよ」
そして悪魔だ。
 
てっきり天国に行ったと思っていたディーンが、なぜか悪魔になって地上にいる。
最初にその噂を聞いたときサムは信じなかったし、探しに行って本当だと知ったときは仰天した。
今のところ大した悪事はしていない。気に入った人間の回りをチョロチョロして、ビールをくすねたり、部屋にごみを散らかしたり、仕事に茶々を入れてうるさがられるくらいだ。ただ、生きていた時の記憶はない。
そして、時間がたてば悪魔らしい悪魔に変わるかもしれない。
だから仕事をやめ、結婚しようとしていた女性と別れ、追いかけ始めた。
 
古い家のベルを押す。
「なんの用だ」
 体格のいい、だが荒んだ顔つきの男がドアの隙間からこちらを見る。
 またこのタイプかクソ兄貴。
 サムはいら立ちを抑えて微笑みを浮かべる。
今のディーンは人間だったころの記憶はない。記憶はないのだがどうも現れる場所がボビー・シンガータイプか、ジョン・ウィンチェスタータイプのごつくて偏屈、偏った分野に博識な親父タイプの周囲に偏っている。
孤独な美女の周囲とかが一回もないのには驚いた。クソ兄貴のファザコンには驚くばかりだ。
だけど、弁護士志望の学生の周囲をうろつかれたりしたら、もっとムカつく気もする。
「教会から派遣されてきました」
 そこは一人で整備工場を営んでいる男の工場で、ディーンは整備の仕方にケチをつけつつ、倉庫の中をうろうろしていた。サムが作業場に踏み込むと、
「来やがった」
とつぶやいて姿を消した。

 
「それでいいのだよ。悪魔が罪なき人から離れたのだから」
またもディーンを捕まえ損ねて、ため息をつくサムに対して神父は言った。
「………そうですね」
悪魔祓いとしてはそうだろう。
「仮に捕まえたとして、その後どうするのだね」
ハンターとしては地獄に戻すか、殺すかだが、それもするつもりはない。
 
「とりあえず捕まえておきます」
「どこに」
「それはまあ、どうとでも」
サムが言うと司祭はまた興味深そうな顔をする。
「いつまで?」
訊かれてサムは自分が死ぬまで、と答えかけて少し考えた。
「とりあえず、僕がもう少し年を食って、孤独で偏屈な年寄りになるまで」
そうしたらぎすぎす怒りっぽい自分の周りで、兄は昔の姿のままでふらふら好きなことをして過ごすかもしれない。
続くかも
 
・・・・・・
見直して気になるところだけちょっと手を入れました。
これで捕まえたらまた監禁ものかなあ。なんか前にも書いた気がする。

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