在宅指示がでたタイミングが悪かった。ちょうどルームメイトが引っ越してしまって宿なしだったジェンセンに、たまたま機嫌のよかったジャレッドが、
「うちの部屋を一つ使っていいぞ」
と言ったのだ。
断っておくとその時ニュースでもっぱら言われていたのは、
「2週間人の流れが止まれば感染の拡大は収まる」
という説だった。まさかそこから延々と3か月も続くなんていったい誰が考えたというのか。
撮影は止まるわ、ジムには行けないわ、オーガニックフードの在庫は尽きるわ、
そして直接話せる相手がお互いだけだ。
あまりに暇なので地下のスタジオでアメリカンコミックモノのシナリオやら、古典劇の練習をして遊んでいたらスタッフがネットに流してちょっとした騒ぎになった。
ジェンセンは自分が半端なアクションで格好つけている部分を流されて悶絶したし、完璧主義のジャレッドは照明が気に食わなくて削除しろと大騒ぎした。
しかし番組的には撮影も止まっている中、本編のストーリーに関係なく宣伝が続けられる効果は大きく、ついにはギャラが発生した時点で二人とも黙った。
世界中がどんでん返しの中、中断した撮影が続けられるかは神のみぞ知るだ。スタッフの安全を考えれば番宣の映像を取ることなどできない中、「たまたま」ルームシェアしている主演二人の映像があるというのは僥倖だ、と言ったのは誰だったか。
そんな中、ジャレッドの誕生日だった。
さっさと済まそうと乾杯する映像を送ったら、
「月並みすぎる」
とリテークされた。なんだそれはと憤慨したが、それならと大げさにBGMをかけて踊るギャグリール的な映像を撮ってみたが、今度は「わざとらしい」ときた。
「どうしろっていうんだ」
誕生日にあれこれ注文をつけられる状況にジェンセンは憤慨したが、意外に当人は冷静だった。
「どうせ最悪の誕生日なんだ。問題があるほうがまだましだ」
自分も最悪の要因の一つなのだろうかとジェンセンは静かに悩むが、もちろん本人には聞けない。
「バリエーションをつけろということなのか、それとも狙っている反応があるのか」
「それなら指示して来ればいいんだ。自由にやれといっておいて、ケチをつけるのにいちいち反応することはないと思うぞ」
結局面倒くさくなってソファで他局の大ヒットドラマを見ているという手抜き映像を送って、終わりにしたが、なぜか結局それが採用になっていた。
「朝からこいつに「おめでとう」をもう5回も言ってるんだ!飽きた!」
と叫ぶジェンセンと、ドラマを観ながら、「このセリフ言いたい!言わせろ!」と叫ぶジャレッドという番宣上問題じゃないかと思う部分も公開され、後日分かったがなぜか一番多くいいねがついた。
「あとどれだけ続くんだろうなあ」
デリバリーのディナーをつつきながらジェンセンが呟く。
「さあね」
応えるジャレッドは手酌でもう一杯ワインを注いだ。
「誕生日なんて本来なら家族や友人と過ごすのがいいのにな」
気の毒そうにジェンセンが呟くのに、ジャレッドはちょっと眉を上げて、
「まあ、仕方がないない」
と言い放つと、ジェンセンの開いたグラスに金色がかった酒を注いで、
「せいぜい祝ってくれ」
と乾杯を強請った。
なんかようわからんネタになったけど終わる。
リアリティーショー仕立ての二人のステイホーム生活が配信されたらいいのになあ。
月刊ブログに構ってくださる皆様ありがとうございます!今週は連休もあるので今週こそお礼に来ます!
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