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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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夫婦記憶喪失本のおまけ

 本の後ろにくっついていたおまけ文






<オマケ1 その後の話>
解放感の後、熱が少し引いた目を開ける。腕の下には荒い息をついて目元を赤くしたディーンがいる。
(何をしているんだ僕は?)
見慣れた顔の見慣れない様を呆然と見下ろす。と、熱に潤んでいた碧の目が、ふと不安そうに揺れた。
「サム?」
その声で思い出す。そうだった、驚くことはない。彼は自分のもので、今は記憶をなくして自分が頼りなのだ。大事に守らないと、そう思う。
「ごめん、なんでもないよ」
汗の引かない身体を抱きしめる。汗とソープと硝煙と。何度洗っても落ちきらない馴染んだ彼の匂い。首を伝う汗をそっと舐め取ると、くすぐってえよ、と低い声が笑った。

・  ・  ・


「うわあ!」
「なんだよ夜中に」
「……へ……変な夢見た」
サムは飛び起きたベッドの上で冷や汗をかく。
きっとディーンに昨日無理矢理見せられた「エロスの館」7連チャンのせいだ。だけどよりによってなんでディーンと。
恐々と首を捻じ曲げ、隣のベッドを見る。自分の声で起こされたらしい兄は、不機嫌そうな顔をして半目を開けている。
しかめた眉、頬に浮いた無精ひげ、ゆがめられた口からは御馴染みの罵声が連続して発射される。夜に迷惑だ馬鹿、アホ、デブ、ガキ、云々。
そう、いつもの兄貴だ。偉そうでうるさい、マッチョな兄貴。
例によってまたここ一ヶ月余りの記憶が曖昧なサムの面倒を見るのに、随分と大変だったらしい。サムが正気づくと一頻り喜んだ後、なぜかエロビデオを無理矢理見させられた。自分が見るならともかく、謎だ。
「なんでもない・・・」
きっとエロスの館にあんなシーンがあったに違いない。途中で飽きるわ疲れるわでちゃんと観ていなかったけれど。そしてもしかしたら自分は今欲求不満なのかもしれない。あまり溜まっている感じとかはしないのだが。
また頭にさっきの映像を結びそうになり、頭を振って散らす。色々文句はあるものの、エロビデオの女優の位置に世話をかけている兄弟を持ってくるのはあまりにひどい。
ちらりと目をやると、もうサムに文句を言うのも飽きたらしくこちらに背を向けたディーンの後ろ頭だけが見える。
あの首からは、やはり汗とソープと硝煙の匂いはするのだろう。
馴染んだ彼の香り。
なんとなくそれだけは確かなような気がした。


 
<おまけ2 記憶喪失真っ最中の話>

二人でキッチンに立ち、一緒に料理をするようになったのは結構早い時期だ。
「ディーン、そこの塩とって」
「ほら。…あ、お前また豆乳買ってきたな」
「身体にいいんだよ」
「でもなんかくせえよ、それ。俺苦手」
「わがまま言わないの」
「わがままじゃねえ、好みだ」
料理の腕は同じようなものだったので、ディーンも引け目なく過ごすことができる。記憶が無いなりにサムと暮らすことにも慣れ、ちょっとした主張や口げんかも当たり前になってきた。文句を言いつつも結局出された豆乳を飲むことになるのはお約束だ。
だけどフライパンを持つ手も、野菜を切るナイフも、自分がそれに馴染んでいないことを伝えてくるような気がする。きっと自分もサムも今、似合わないことをしているのだ。



「ディーンはちょっと昔のロックが凄く好きだったんだよ」
そう言ってサムがどこからかカセットデッキを持ち込んできた。次々かけてくれる曲は確かにディーンの気分に合っていて、気に入って歌っていたらサムも笑って一緒に歌った。それは結構楽しくて、何となく癖になりつつあったが、ある日一緒に歌いながら部屋の掃除をしていたら打ち合わせに来たボビーがなんとも凄い顔をしたので止めた。
「気にしなくてもいいのに」
そう言ってサムは残念そうな顔をしたが、いい年した大人が部屋の中で歌っている(しかも2人で)というのはやはり変だろうし、前の自分を知っているボビーの反応は気になる。そうディーンが言うと、
「そっか。それもそうだね」
とサムはまた穏やかに言ってディーンの頭を撫でた。
「やめろよ」
これまたいい年した男にすることじゃないだろう。そう言って手を払いのけると、「冷たくされると悲しい」とか言いつつ、ひげの伸びかけた顔でぐりぐりと頬ずりされて後悔した。全般的にサムはやたらとディーンの頭や頬を撫でるのが好きだ。



寒い朝には、洗面台の前で歯磨きをするサムの背中にもたれて歯をみがくのがディーンの定番になった。
「ディーン。重いよ」
「へーきだろ」
本気で無さそうな抗議を無視してさらにもたれると、やっぱり平気そうでサムの身体は揺るぎもしない。
「こら」
「んー」
何も言われないよりも、怒っていない声でちょっと文句を言われるくらいの方が実はくっつきやすいのだ。多分サムもそれを知っていて、だから形だけ抗議する。
歯を磨きながら外を見ると雲の隙間から少しだけ陽の光が見えている。寒い朝に体温の高いサムの背中は温かくて居心地がいい。



揺るがない体格はいいことばかりとは限らない。
時にはディーンも本気で怒る。記憶があろうとなかろうと。
「いい加減にしろよこの筋肉デブ!重いんだよ!」
なぜならついさっき起こったことだからだ。朝の光でキッチンは明るい。明るいキッチンで皿を洗っていたはずなのに、サムとキスをした流れでついうっかり朝っぱらから床と仲良しになった。だがベッドと違って床は固い。そしてサムがやたらと重い。結果、今ディーンの膝はずきずきしている。
「まあ、ディーンよりは確かに重いよね」
いつも落ち着いているサムは、ディーンが本気で怒っているこんな時でもやっぱり落ち着いていてムカつく。しらっとした顔でまたキスしてくるので振り払う。
「重すぎだ!このデブデブ!痩せろ!」
ウェイトが違うと大変なのだ。これまでの自分がどうだったのかなんて知らないが、体重の差で好きにされるのは自分の好みではない。泣かされるのも絶対趣味じゃない。カウンターの後で服を拾いながら、シャツでサムを殴っているとボビーが来たので慌ててボタンを留める。
「おはようボビー」
先に服を着終わったサムが立ち上がって時間を稼いでいる間にシャツを着てフロアに出た。
「なにやってるんだお前ら」
「なんでもねーよ」
男夫婦のセックスライフなんぞ、別にボビーも聞きたくないだろうから肩をすくめて濁す。服は着たし、ばれる理由もないのだが、何となくボビーが怪しんでいるのが分かって気まずい。
(お前のせいだぞ)
サムの方を見て思いきり舌を出してやったら何故かふき出された。



買い出しには時々行くものの、外出をほとんどしていない。たまには外に飲みに行こうかという話をしたときだ。
「そうだ、外ではボビー達以外の知り合いには、僕ら『兄弟』ってことにしてるから、気をつけてね」
 サムに言われて驚いた。
「なんで?」
尋ねるとサムはちょっと首をかしげる。
「ディーンがそうして欲しいって前に言ってたんだよ」
「……覚えてねーよ」
「うん、でも、記憶が戻った時にディーンが困るといけないしね」
「なんか面倒くせえな。外ではお前は兄貴ってことにしてたのか俺」
 言ったらサムがちょっと目を丸くした。
「え?」
「兄弟ってことにすんだろ。そういえば俺とお前って何歳差?」
確認するとサムは何だか困った顔をして笑う。
「4歳違いだけど…うーん、まあ、ややこしいかな。面倒だったらやっぱりここで飲もうか」

何かを言いかけ、止めたのが分かる。
サムはいつも優しく穏やかだが、時々自分を見る目が寂しそうなのは知っていた。
自分は自分ではあるのだが、サムの会いたい『ディーン』ではないのだとそんな時感じる。
(早く思い出してやらないとな)
暗闇で化物を狩る仕事は、暗く、汚なく、正直恐い。
だが銃を撃つ衝撃やナイフを握る感触が手から脳に伝わるとき、確かに記憶の道がつながりそうな瞬間がある。

また考え込んでいたらしい自分を心配そうに見つめるサムに、たまには自分から手を伸ばしてその髪を撫でた。
驚いたように眉を上げた後、顔をくしゃりとさせて笑う。
そのくせっ毛の感触は手に馴染んで、自分はきっと何度もこの髪を撫でたのだろうと思う。道標のような男に抱き寄せられながら、ディーンは懐かしい匂いのするその髪にちょっと顔を埋めた。

END
 
 

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