更新しようと思い続けているのに、仕事から帰ってくるとだらだらほかのことをしてしまって日が過ぎております。
いかーーーーん!!
そういえばスパナチュファイナルプロジェクトの上映会は2回目があったようですね。応募しましたがもちろん当たりませんでした( ;∀;) そりゃそーだ。
競争率が高いのもうれしい複雑なファン心です。次はS3上映会。皆さん応募なさいました?
会場はたぶんまたワーナーの試写室なんだろうな…都内会場に平日夜に行けそうな方はぜひ!
あ、しかし最近はコロナとかの心配もあるからうかつにおすすめもできないか…ファン活動って外から見たら不要不急ですもんね…しかし心のエネルギー的には必需品なんだが…
さて、世は連休ですが私はあまり関係ないので、とりあえずムパラのペーパーもう一つ上げておきます。オメガ別バージョンのSD。抑制剤大量摂取の兄貴。ヒート中のことはまるっと忘れます。(そして先ほどコメントへのお礼書いていたので、うっかりお礼ブログにアップするところでしたよあぶねえあぶねえ)
今までなかったのがふしぎなくらいだが、ついにその日が来てしまった。ヒートと狩の山場のバッティングである。予定日はもう少し先だったのだが、今回はやや前倒しに予兆がきている。「仕方がない。抑制剤を使おう」
サムが言い、ディーンは当然だな、とうなずいた。なにせ人命がかかっている。
ディーンは過剰摂取の中毒症状を起こした後しばらくは薬剤自体の使用を止められていたが、絶対禁止の期間は過ぎている。
「じゃあちょっと行ってくる」
さっそくディーンは薬局に出かけたが、買ってきた抑制剤を見て、サムが無言で袋をむしりとった。
「何すんだこの…」
「なんだこの量は!?!」
文句を言いかけるのを遮って大声が出たのはわざとではない。効き目の強い抑制剤を薬局で買う時は医師の書いた証明書が必要になる。サムは番になった後のディーンの診察にも立ち会った。正確な適正量を覚えているわけではないが、絶対にこんなアホみたいな量ではなかったはずだ。
「落ち着けサミー。念の為に予備分も買ってきただけだ」
ディーンは年上の余裕を伺わせる笑顔で宥めるが、サムの眉間の皺は消えない。
「薬局の袋が三軒分あるのはなに」
「だから予備だって」
どうやって、と聞きかけて止めた。証明書を複製して買ったに決まってる。偽造IDと偽造カードを常用している自分達でわざわざ聞くのも馬鹿みたいだ。
「とりあえず予備分は預かる」
「おい」
しばらく睨み合ったが、珍しくディーンが先に折れた。
「分かった。どれでもいいからよこせ。早く飲まないとやばい」
「う、うん」
切羽詰まった様子にサムも少し焦り、三つの袋のうち一つだけ渡す。
大体一度に処方されるのは一週間分だが、ディーンは手早くいくつかの包装を開けると、あっという間に錠剤を飲み込んだ。
「あ!またそうやって」
絶対一回分の量じゃなかった。とサムは目を吊り上げるが、ディーンは反論しなかった。俯いて口元を押さえている。
「ディーン?」
「……ちょっと待て…やばい」
それを聞いたサムも固まる。
もしや始まってしまったのか。サムもディーンがでかけている間に抑制剤は飲んでいたが、正直言って番のヒートに反応せずにいられるかはわからない。
「大丈夫?」
「しゃべるな!」
動かない様子が心配になって、手を伸ばすとものすごい勢いで怒鳴られた。
触るなどころではなく喋るなときたのでムッとする。だが、俯いたままのディーンから、
「しゃべると匂いがするからやばい…」
と危機感に満ちた声がしたのでぴたりと黙った。さすがにここでいう匂いがなんのことはすぐにわかる。フェロモンだ。ヒートの最中は互いの唾液すら強烈に甘い。
「だめだ…もう一袋よこせ…」
「ダメだって、決まった量を守れよ」
俯いたまま手を伸ばしてくるので袋を持って逃げる。
「おいサム!」
いらだった声を出されてもゆずらず、首をふるふる振った。
だめだも何も、飲んだのはついさっきだ。錠剤がそんなに早く効くわけがない。ディーンも近づくのはまずいと思うのか、ソファの上から唸るばかりで追ってはこない。
うーん、どうしよう。
少なくとも三〇分は経たないと効いてこないだろうから、本当に足りないのかどうかも判断できない。だが、そもそもの問題として、早く狩の準備もしなくてはならなかった。
「見込みとしては残ってるのは例の共同墓地」
「おう」
「できれば二人で行きたいけど、狙われてる対象者にどっちかが護衛につくかどうか次第だね」
「…まあ、ついた方がいいだろうな」
「仕方がないか」
「お前と俺も今は別行動のほうが気が散らねえし」
まだ薬が効いてこないというディーンから距離を取り、部屋の隅と隅で電話を使って打ち合わせをする。電話から聞こえる声だけ聞くと平静だが、本体はソファの上で頭からサムの上着を被って丸まっているので、サムは幽霊退治に意識を持っていくのに苦労する。ああ、今まで何回もこういう感じの平静な声で騙されてきたんだろうなあ。
見ているとどんどん放っておけなくなってくる。我慢せずに触れれば済むことなのに。
「…今さらだけどさ、決着着けるのって今夜じゃないといけない理由ってあったっけ」
「見張りが留守してるのが今日までだろ」
「ああそっか」
忘れていた。ヒートなのはディーンなのに、つられたように気もそぞろになっている。
ともあれなんとか狩は終わった。普段の数倍疲れたが、犠牲者も出さず、兄弟も大きな怪我はしなかった。
「狩も終わったことだし、何日か休憩しようよ」
サムが言うと、ディーンは顔をしかめる。
「…いやもうピークは過ぎたから、いいんじゃねえのか」
そう言った後、ハッと気づいたような顔をする。
「ただの休憩か?」
「ヒート中に何言ってんの」
「じゃあパス」
ディーンは短く答えるとシーツをかぶってしまう。
サムは口では「えー」と文句を言いつつも微妙な気分だ。
だいぶ朦朧としているディーンは気がついていないが、もうここはがっちりと防音の効いたモーテルだし、来る途中で各種買い出しも済ませている。ピークは過ぎたとか言っているが、サムの経験からすると本当にきついのはこれからだ。本人自覚があるのか不明だが、サムの上着やシャツを抱え込み、息もやや荒い。
「ディーン、このままじゃ僕もしんどいんだけど」
「アルファが何言ってんだ」
哀れっぽく訴えてみるが、番の返答はつれない。
「ちえー」
仕方がないので一旦引くことにした。
「じゃあ僕はちょっと食事するよ。ディーンもピーク過ぎたなら食べる? 色々買ってきたけど」
「いらん…」
予想通りの答えに肩をすくめる。ディーンの様子はますますしんどそうで、多分抑制剤の効果がそろそろ切れるのだろう。完全に切れるのを待てばいいのに、ちょっかいをかけているのは、今ならディーンの記憶に残りそうな気がするからだ。
「水くれ…」
シーツとサムの服の下から、掠れた声がする。ほら、と買い物袋から取り出して差し出すと、頭は出てこず、腕だけが伸びてきた。
その手に水のボトルを握らせたついでに、指と指の間をそっと撫でた。そこはディーンがいつも敏感に反応する場所だった。
結果。
「んあ?」
ディーンが目を開けるとシーツの山に埋もれていて、サムが、横でパソコンを使っていた。サムはネルシャツとデニムという恰好で、自分はスウェットの上下を着ている。ちょっと転がればぶつかりそうだ。ディーンが身じろぎするとサムが視線を向ける。
「あ。起きた。気分どう?」
「ん………」
まだ眠気が強くて目を閉じると、軽く髪を撫でられた。
「ごめんね」
? なんのことやら。ヒートの後に記憶が飛ぶのはいつものことだが、謝られることはあまりない。
「なにが?」
目を閉じたまま訊いたら、
「覚えてないならいいよ」
と声だけが返ってくる。
「あ―――…」
両手をついて起き上がるろうとしたが、サムの体温と匂いから離れると急に寒いので、起きるのは止めてもう少し寝ることにした。
デニムの感触は固いが、サムの匂いはふわふわする。
まだヒートが終わりきらないようで寝てしまったディーンを見下ろし、サムはため息をついた。ぎりぎりで堪えていたところにいきなりセクシャルな触れ方をしたせいで、今回のヒートは大変だった。下手に最初やり過ごそうとしていたこともあり、お互い色々タガが外れ過ぎた。思い出すと我ながらAVの見過ぎじゃないかと思うようなことをあれこれやってしまい、サムは軽く自己嫌悪だ。ディーンが忘れているのが良かった気もするし、一人で覚えているのがなかなか物悲しかったりもする。
後日、ディーンはホテルのアダルト番組をじっと見つめるサムが、
「これもやった。あ、これも、これもやったなあ」
と呟いているのを不気味なものを見る目で見つめた。
だが、次にそれをした相手が自分だということに気が付くと無言でリモコンをむしり取り、画面を消しながら弟の頭を角で殴った。
終わらないけど終わる。
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[17回]
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