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海外ドラマの超常現象の兄弟(SD)を中心に、頭の中にほわほわ浮かぶ楽しいことをつぶやく日記です。 二次創作、BL等に流れることも多々ありますので嫌いな方は閲覧をご遠慮くださいませ。
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煉獄ネタ(ムパラs03無配ペーパー)

えー、先日初めてBOOTHへの出品をいたしまして、お申し込みのチェックを日々していた「つもり」だったのですが、どうも全然違うところを見ていたらしく、お申込みくださった皆様をお待たせしていたことがわかりました。
ももももも申し訳ありませんでした(平伏)
操作に手間取るかなー、と思って発送まで7日と長めにとっていたのに、そもそも受注に気づかないとは自分の見積もりがまだまだ甘い…
うきゃー!と飛び上がりまして本日までに支払いをいただいている皆様には発送を済ませました。
ペーパーも同封しようかと思いましたが、また刷ると発送が遅くなりますのでもうアップいたします。

まず一つ目。前に萌えネタで書いていたS10冒頭で荒れてるサミーが、S8冒頭で煉獄から帰ってくる兄貴と会うネタ。
色々場面は浮かぶんですがどーもバランスが悪いので、ホップステップで書きたいとこだけかいたものです。(前置き長い)




サムは何人目かの悪魔を縛り上げると木に吊るし、その腹を裂いた。黒髪の女は悲鳴を上げて身を捩るが無意味だ。肉体が借り物なのだから。
「僕の兄はどこだ」
縦に裂いた腹から内臓がぼとぼとと地面に落ちる。顔に腹に首に、ルビーのナイフが触れるたびに、火傷をしたように身体が跳ね上がった。
「知らないって言ってるでしょう!」
「信じるわけがないだろう」
「言えないのよ、ねえお願い」
何度目かのやり取りの後、血と汗で顔をどろどろにした悪魔がやけくそのように叫ぶ。
「分かったわよ、会わせてやればいいんでしょう!?」
「最初からそう言っている。僕の兄はどこだ」
正確に言えば探しているのは「兄の死体」だ。
バンカーからディーンの遺体が消えてから数か月が経っていた。


・・・
気が付くとサムはうっそうとした林の中に立っていた。木が生い茂り、周囲には灯りもない。
手の中の鎖を引くと悪魔が呻く。そして少し離れた草むらを指さした。
サムはこちらに背を向けている人影を食い入るように見つめる。ダークブロンドの背の高い男だ。青っぽいシャツを着て穴を掘っている。その背も、手慣れた動きも良く知ったものだ。
「ディーン」
身体に入りこんだ悪魔だ。何をやっているのか。
影は穴の上にかがみこんでいる。見つめているともう一つ人影が現れた。型の古い上着を着た男には見覚えがある。
「ベニー?」
ディーンが煉獄で知り合った吸血鬼だ。なぜ今ここにいる。
サムが見つめる視線の先で、二人は何か言い合い、ハグを交わして離れる。
「…どういうことだ」
サムは手に持った鎖を引く。血まみれの女が罵りの言葉を吐いた。
「死体のありかなんか知らないって言ったでしょ。過去に連れてきてやったのよ、あいつが煉獄から戻ってきた時に」
「…なんだと」
サムは軽く息を飲んで、動いている人影に改めて目を凝らした。


・・・


昔の仲間とけりをつけると言うヴァンパイアの姿が消えた後、ディーンは久しぶりに襲ってきた空腹感と眠気に戸惑った。
煉獄での日々は過酷だと思っていたが、考えてみれば飢えた記憶は無い。腹はよじれるように何か入れろと訴えるが、周囲は林だ。
とりあえず睡眠だけでもとろう。
ディーンは考えるのを止め、ベニーの骨を掘りだした穴を埋め戻すのは後にして目を閉じる。まともな人間は林の中で転がって寝たりはしないだろうが、今も昔もまともだったことなどないから支障ない。

だが、目を閉じて息をつく間もなくちかづいてくる気配があり、ディーンは素早く体を起こすと身構えた。
闇から湧いて出たように、黒い影がぬっと現れる。
近づいてくる禍々しい気配を見つめた。
「…………サム?」
月明かりに照らされた姿に、これは現実かと戸惑う。片腕を吊った弟に見える男は、鎖でがんじがらめにした女を引きずっている。
「ディーン」
ディーンは応えられずに相手を見つめる。血走った目と削げた頬。荒み切った表情。姿かたちは同じでも、咄嗟に弟だと信じられなかった。
「…ディーン」
だが、何か言おうと口を開こうとしては失敗し、名前を呼ぶばかりで立ち尽くす姿が、不意に子供の頃と重なった
「サム」
呼んだ途端、はじけるようにしがみついてくる。
人のことを言えた格好ではないが、ぼろぼろの身体を抱き返した。
「生きてるんだね、ディーン」
「多分な」
ぽんぽんとその背中を叩く。
「なにそれ」
「地獄に続いて煉獄に行ってきた」
「うん、お帰り」
煉獄、と聞いても平然としているのが意外な気もしたし、自分が消えた後、弟はこんな風に自分を探していたのかと驚く気持ちもあった。必死に探すだろうとは思っていた。だがこれほどまでに荒むとは。
「ほら、会わせてやったわよ、離しなさいよ!」
足元からしわがれた叫び声が上がる。
すっかり忘れられていた女の目が真っ赤に光っている。
悪魔だ。
「…契約してないだろうな」
尋ねるディーンにサムは笑って首を振る。
そして口元に笑いを残したまま、足元の悪魔にナイフを突き通した。
これは誰だ。
叫び声が途絶えて、女の体からナイフを抜くサムの姿を見ながら、ディーンは自分がいなかった間、弟はどんな日々を過ごしていたのかともう一度考えた。

「それでさディーン」
掘りだしたままの穴に、悪魔の身体を投げこんだ後、サムが尋ねた。
「ん?」
「ここって、どの辺り?」
「…ルイジアナだろ」
なんで煉獄から帰ったばかりの自分が場所を訊かれるのか。不審な思いが顔に出たらしい。
サムが苦笑して、
「ぼくはほら、悪魔に連れてこられたからさ」
と肩をすくめる相手になるほどと思う。

「まあいい、そろそろ移動しようぜ」
さすがに眠気のとんだディーンが言い、二人は歩き出す。

大きな道路沿いというわけでもなく、車もない。
結構な長時間歩いた後、何とか場末のモーテルに転がり込んだ。
「何か食べる物と着替えを調達してくるから、ディーンはとにかくシャワーをしてくれ」
チェックインを済ませるとサムはそう言って部屋を出ていき、ディーンは部屋をぐるりと見回した。
花柄の壁紙は変色しかけているし、けばけばしい色のベッドカバーとまるで合っていない。部屋は狭くて壁も薄い。
しかしながら久しぶりの屋根のある部屋だ。
ディーンは少しぼうっとしながらベッドに座りかけ、危うく穴掘りをしていたままの格好であることを思いだして立ち上がった。
何となく現実感がないままバスタブに湯を張る。
湯に身体を沈めると思わず声が出た。なにせ煉獄ではたまに水辺で手や顔を洗う程度だったのだ。バスタブの中はあっという間に黒くなるが、熱い温度が惜しくて限界まで頭や身体を洗ってから流した。
もう一度張り直してあらためて湯につかる。
湯が水に変わるまでシャワーを浴び続け、やっと浴室を出るとサムがちょうど帰ってきたところだった。


・・・


せっかくのやり直しの機会だ。同じ失敗はしない。

思いがけず生きているディーンと再会して数か月。
サムは自分達が辿った道をどうしたら変えられるかを考え、避けることに考えを集中していた。

このまま同じ道をたどれば、ディーンは死ぬ。
ディーンを殺したのはメタトロン、ディーンを呪縛で変えてしまったのはカインの印、カインの印を受け継ぐことになったのはアバドンを倒すため。
最悪の別れにつながる流れはどこから始まったのか記憶を辿る。

「サム、ディーンと買い物に行ってくるけど何かある?」
パソコンを睨むサムに、ケビンが声をかけた。
「ああ、頼むよ」

この時点では、ディーンと同じくケビンもまだ生きている。
ケビンとの再会もサムの記憶よりは大分ましになった。こうしてやりなおせるからには、ケビンも死なせたくない。
ケビンを殺したのはガドリエル、
あの天使を近づけないためにはサムが死にかけないこと。
そのためには石板の試練を受けないことだ。

「ただいま」
「お前、またなんかごちゃごちゃ書いてるのか」
気がつくとまた時間が経っていたらしく、荷物を抱えたケビンとディーンが帰ってきた。
「見事に全く同じ姿勢だね。椅子の位置もずれてないから立ち上がってもいないと思うよ」
「あんまり根詰めるなよ。はげるぞ」
自分のいた時間では、もう会えない二人の軽口に思わず目が潤みそうになって慌てて画面を覗き込むふりをする。こんな場面で泣いたら本気で不審者だ。
過去を変えるのはさまざまな弊害を生むはずだが、サムは二年後の世界がどう変わろうと構わなかった。

二年前のディーンは当たり前だが記憶より若い。そして生きている。そう思うと、どうしても向ける視線が湿っぽくなるらしい。
「お前な。止めろそういう視線は」
時々ディーンは嫌そうに睨んでくるが、兄を探さずにアメリアと暮らしていたことを知られた時の、あのねちっこく根深い怒りを覚えている身としては、怒られている内にも入らない。
「いいだろ。生きてまた会えると思ってなかったから嬉しいんだ」
ストレートに言うと、口をぱくぱくさせて黙ってしまう。
二人が買ってきた昼食にはサム用らしいサラダやローストチキンのパックがある。
良かった。
ディーンが煉獄から帰ってきてからのあれこれは、サムにとってかなり大きな後悔の種だった。再会の仕方が違うと、ディーンとの関係もこんなにも違う。
大失敗したゲームの二周目のように、サムはかつて兄の怒りを買った行動をなるべく避けていた。だから兄がちょくちょくベニーに電話をしているのも見てみぬふりをしたし、どこからか献血のパックをくすねてきて差し入れに行くのも、昔の仲間への復讐に加勢するのも黙って行かせた。

「ベニーだ」
復讐が終わって生真面目に差し出された手を握り、
「サム・ウィンチェスター」
と短く名乗る。後ろから見守るディーンは少し驚いた顔で、しかしホッとした様子を隠さなかった。

「お前はもっと目くじら立てるかと思ったんだけどな」
モーテルに帰ってきたディーンが言うのに、
「そりゃあね。昔の僕なら絶対に直ぐ狩ろうとしたよ。吸血鬼なんだから」
と返すと固まってしまった。
「だけど、ディーンが見逃してるっていうなら、事情があるんだろ」
「ああ、そうだ」
「なら、今は様子を見るよ」
そう言うとディーンはまたホッとしたように頷いた。
「サンクス」
その顔が本当に嬉しそうでサムは少し憮然とした気分になるが、兄を助け、自分をも助けて結局煉獄に戻っていったお人よしの吸血鬼については今後は放置だ。血縁の所に行って静かに暮らそうとしていたのは分かっているし、地獄の門を閉めるのを止めれば、サムを助けて煉獄に戻る必要もない。
上手くやっている。
そうサムは思う。このままディーンとの関係を良好に保ち、死につながる選択を避けていけば、きっとあの別れを回避できる。
「……また気持ち悪い目になってるぞ」
ディーンが嫌そうな顔で言う。
「僕も色々あったんだよ」
嘘ではない。言っていないことが大きすぎるほど大きいが、嘘ではなかった。


・・・

不意に背後から殺気を感じて飛び退いた。
振り向いた先には少し若い自分の顔がある。手には銀のナイフがあった。
(もう来たか)
小さく舌打ちをする。たしかにアメリアと完全に別れた時期は過ぎていたが、思ったよりも見つかるのが早かった。
あの時の自分の思考回路なら、まずは資金を調達し、大学へ再び入学する道を探しているだろうと思ったのに。
ディーンがあちこちに残した伝言はなかったはずだ。そしてディーンと再会したモンタナ州の避難小屋に行っても、そこにディーンはいない。なぜならすでにサムと合流しているのだから。
(参ったな)
自分で自分に対して何なのだが、邪魔だという意識しか浮かんでこない。
「何者だ」
若いサムが険悪な顔で唸る。
ああ、そうだろうな。お前は知らない。何ひとつ。
「シェイプシフターか」
「僕はサム・ウィンチェスターだ」
「ふざけるな!!」
「今からざっと二年後から来た」
そう言うと少し表情が動く。その目が自分の削げた頬や目の下の隈にあてられるのを感じて、サムは口元を少し歪めた。そう、悪魔やシェイプシフターが化けているにしては似ていないだろう。


・・・


「おい、どうした」
モーテルの部屋に戻るとディーンが怪訝そうな声を出す。よっぽど顔に出ているらしい。
「うん、ちょっとね」
二年前の自分は酷かった。
隠しても仕方がないとざっと話した事情を、飲みこむのに時間がかかったのはまだいい。ちょっと前までこいつにとっては、死んだと思っていた恋人の夫が生きて帰ってきたことが最重要だったのだ。
だが次のセリフが、
「そっちがディーンと狩をするとして、僕はどうなるんだ」
だった。なんだあれは。
「なんだと?」
 訊き返すサムに、二年前の自分は、
「未来からの情報があるのはありがたい。だけど僕がいずれ狩りに戻る必要があるなら、そちらからの情報を聞きながらディーンと僕が行動した方がいいんじゃないのか」
 としゃあしゃあと言った。
「無理するな。まだ彼女と完全に終わったわけじゃないだろう」
 半ば以上嫌味で言う。しかし事実だ。この時点の自分は、ごっこ遊びのような恋人との暮らしに未練たらたらだった。
 だが。
「アメリアとは終わってる。ドンが還ってきたんだから。それにディーンが生きていて、これからそんなことがあると聞いたら放っておけるわけがないだろう」
 今まですべてを放っておいた奴がどの口で言うのか。
何とか言いくるめて別行動させたが、いずれまた近づいてくるのは分かっていた。
だが、そんなこともどうでもいい。首元がざわざわするのは別の理由だ。
(戻ってしまうかもしれない)
ディーンが死に、一人で悪魔を狩潰していたあの時間に。この時代の自分と接触してしまった後、そんな気がしてならなかった。
まだアバドンを封じていない。まだ地獄の門を完全に諦めさせてもいない。あの刻印と剣が彼に何をもたらすかを伝えていない。
「おい、サム」
ディーンが本気で心配そうな声を出す。肩を掴まれて振り向くと、自分を見つめるヘイゼルグリーンが間近にあった。
思わずしがみつく。
「頼むから 」
死なないで。
離れたくない。
そう言ったつもりだった。


・・・・・・・
 気がつくと、見覚えのある机に突っ伏していた。
「ここは…」
呟いてはっと顔を上げる。腕の下には本や地図が広げっぱなしになっている。壁際の棚にぎっしり詰まった古い書籍。明かりの中に浮かぶ司令デスク。
バンカーだ。
戻ってきてしまった。
胃がぎゅっと縮む。ディーンが死んでしまった後の世界へ。自分の本来の時間へ。まだ何も防げていないのに。
「くそ…っ」
舌打ちして立ち上がる。
多分、過去の自分に会ったことがきっかけだ。
(殺してしまえばよかった)
それで自分が消えようと構わなかった。自分がいなければ試練は進まない。ガドリエルも現れない。
(ここに戻るくらいなら、殺してしまえばよかったんだ)
とっさにそれを思いつかなかったのが最大の失敗のように思えた。
だが戻ってきてしまった以上仕方がない。また別の悪魔を捕まえてディーンの身体を探すしかなかった。

泣きたいような気分になりつつ水を飲もうとキッチンに行くと、
「………あれ」
ディーンが巨大なピザの箱を抱えてもしゃもしゃと食べていた。向かいではケビンがうんざりした顔でコーラを飲んでいる。
「あ、来た。やっぱり今食べる?」
ケビンが振り返って半分以上無くなったピザを指す。
「あれ…?」
今は何年だ。戻ったと思ったのは勘違いだったのかもしれない。
「ディーンってば。それ以上食べるなよ、ベニーもまだ食べてないんだよ!」
 ケビンが言いながらピザの箱の蓋を無理矢理閉じる。
「ベニー?」
なんでその名前がここで出る。
「彼もここに住んでいるからだ。サム」 
「うわあ」
不意に後ろから声がして、サムは飛び上がりそうになった。振り返れば眉をひそめたカスティエルが立っている。過去の世界では会っていないのでなんだか随分と久しぶりだ。
「時間軸の統合が不完全なようだな。だがしばらくすれば落ち着くだろう」
「……もしかして僕に何があったか分かってる?」
「もちろんだ」
さすが天使というべきか。
確認したところによると、やはり過去の自分自身に会った後、未来から来たサムの姿は消え、心配するディーンたちの前に同じ時代のサムが現れたのだという。
「君がパソコンに残した警告をもとに、過去の君はディーンもケビンも生き延びさせた。ついでにあの吸血鬼も」
「あの野郎…」
ずるい。人の伝えた知識と分析でいいカッコをしたわけだ。やっぱり殴っておけばよかった。
「過去の君も君のことを殴っておけば良かったとよく悔しがっていた」
「え。」
また心の中を読んだようなことを言われて焦る。
「人をバカにして、偉そうだと」
「ああ…まあね」
だが馬鹿にされても仕方がない。なにせあの時点の自分は、アメリアへの未練だの大学に入り直したいだのとおよそ実戦向きでないことしか考えていなかったのだ。
「天界はどうなの」
「揉めている」
まあ崩壊していないだけました。聞く限り天使たちが大量に地上に落ちてくることもなかったそうなので、随分と平和度は増している。
それにしても。
「増えすぎだろう…」
カスティエルとケビンまではともかく、魔物までバンカーに引き入れるとは何を考えているんだ自分は。
そうこうしている間に、噂の吸血鬼がキッチンに入ってくる。何かの整備でもしていたのか、黒く汚れた手を拭いていた。
「お疲れ。シカゴとトロピカルがあるけどどっちがいい?」
「トロピカル」
ケビンの声にベニーが応え、ディーンがうえええと顔を歪める。
「温いパイナップルなんか食う奴の気がしれないぜ」
「ほっとけ」
吸血鬼がピザを食べるのか?と思ってみていると、拳でディーンを殴るふりをしていたベニーが不意に振り返る。
「サム。お前の探してたファイルを見つけたから共有に入れておいたぞ」
「共有?」
「グーグルの」
「…わかった」
前時代の魔物だったくせに随分と順応が早い。そして魔物に何を頼んでるんだ自分。
「片付かないからみんな座れば?」
ケビンが言ってキッチンでウロウロしていた男たちは思い思いの席につく。
「サム? こっち」 
近くの椅子を引いてかけようとしたら、怪訝な顔のケビンにディーンの横の席を指された。カスティエルとベニーも当たり前の顔をして場所を空ける。
「え、なに?」
別に席なんかどこでもいいのでは。キョトンとするとケビンとベニーが怪訝な顔をし、ディーンは何やらムッとした顔になる。なんなんだ席順に何の意味が。

 
 一人きりで兄の遺体を探すことになると思ったが、今のバンカーでは人間と預言者と天使と吸血鬼が好き勝手に暮らしている。そしてディーンは何となく柔らかい表情で生きている。
 その点、あの時代の自分はよくやってくれたのだろう。サムが大まかにしか話していなかった事情とパソコンに打ち込んでいた意味不明の単語の羅列から、あの時点では起こっていなかった危険を察知し、回避した。
(まあ、いいか)
 カスティエルが言うところの記憶が統合される気配はさっぱりなかったが、細かいことはすぐにわからなくても支障なさそうだ。
 そう思って現状を追及するのを止めたサムだったが、夜になって今の自分がディーンと同じ部屋で寝起きしているのを知って愕然とする。
「え!?」
 そしてのぞいた部屋のベッドは誰憚ることなくキングサイズだ。
「えええ!?」
 部屋の入口で固まるサムを、周囲は(なにやってんだ)という顔で、しかし追及はせず通り過ぎていく。
「お前、どうしたんだ。さっきからなんか変だぞ」
 後ろからディーンが不審そうな声を出すのに、情けない気持ちで振り返る。
 二年前の自分は気に食わなかったが、いますぐ記憶を統合したい。ずるい。険悪にねちねち嫌味をいわれる日々を回避したのは自分のおかげなのに、こんな関係になったきっかけも、どんな言葉をかわしてきたのかも全然自分には分からない。
 
「ディーン」
「なんだよ」
 生きていてくれればいいと思った。
 それ以外は全部どうでもいいと。
 しかし、これはどうでも良くない。絶対良くない。
 あっという間に平和ボケした思考回路に毒されて、サムは部屋の扉に縋りつく。
約二年の自分達の遍歴を、どうしたら怒らせずに教えてもらえるだろう。悩みながら、当たり前のように自分の隣に立つディーンを振り返った。


END

このネタは何度も何度もトライしては挫折していたんですが、
脳内にあるのはS8の兄貴とS10のサミーが会えばすれ違い兄弟ちょうどいいじゃん。
すっごく仲良くやれちゃうじゃん。
だけど、S8本来のサミーが僕の場所を取り戻しに来るよね。サミ対サミは険悪に違いない。
ケビンも助かるし、ベニーも死なないね!
そのうち皆バンカーに来ちゃうぜ。混合チームだぜ(混合チーム好き)。
そんなに仲良く過ごしてたらS10までにはくっついちゃうぜ。
もどったらびっくりすんだろなーサム。ははは。

というのが自分の書きたいポイントだったので、素直にそこだけ書きました。
もう一点、S8サミとS10サミが険悪に出会った後、ディーンのそばにはS10のサミがいて、そこから情報を聞きながらS8のサミも援護的な役割でしばらく並走するっていうのも考えてたんですが、収集付かなくなるのでやめました。








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