ディーン・ウィンチェスターがオメガであると聞いた相手は大抵ひどく驚く。見た目も態度もまるでオメガらしくないからだ。
だが中には突然ニヤニヤしだす奴もいる。そういう奴は大抵アルファだ。
この日バーでディーンに絡んできた相手もそうだった。
「ええ?そうしたらお前、色々大変じゃないか?」
「何がだ」
「ほら、シーズン的なものとかさ」
平常期の今は良くても、発情期になったら、という当てこすりも定番だった。体格もよく自分よりも上位だと思っていた相手が、一旦ヒートに入れば自分の前に膝をつくという想像には、くすぐられる奴が多いらしい。
だが、
「余計なお世話だ。俺は年中恋の季節だしな」
というディーンのセリフでちょっと表情が変わる。
「なんだと?」
「今もお前の言うシーズン的なものの真っ最中だって言ってんだよ」
「ええ?」
オタオタし、ついでにクンクン辺りをかいだ男は、
「うわ、ホントだ」
と慌てた顔になる。
「え、でもなんでお前」
「発情期でもお前にすりよらないのはなんでかって?」
しなだれかかるとは程遠い態度のディーンが、無表情に近づいてくるのに、相手はバカみたいに目を見開いたまま動かない。
(あーあ)
サムはばきぼきと指を鳴らす兄の後ろ姿を見ながら、騒ぎに備えてテーブルに広げていた資料の片付けにかかった。
毎度のことながら、同じような奴が多くて嫌になる。居心地のいいバーだったのに1時間くらいしかいられなかった。
ディーンは相手の目の前に仁王立ちになると、わざとらしくクン、と鼻をひくつかせる。
「俺はうざいアルファの男より女が好きだからだ」
続いて店内に響き渡る破壊音に、サムはあーあと立ち上がる
加勢もしないが止めもしない。
喧嘩っぱやい兄も悪いが、兄をその遺伝子で見下す奴は全員死ねばいいと常々思っているサムだった。
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という感じでたらんたらんと続いています。