ウエスミ小ネタ
ホワイトデーは寝落ちしたので今頃です
「残業は上司の部屋で」ベースの記憶は戻らないまま狩りをしてるウェスミです。
年が明けてからサンドーバーは何かと忙しく、気が付くと3月も半ばになっていた。バレンタインのバの字もない。
壁にかけた時計の日付が14日を指しているのを見て、ディーンは一か月前に食事に行こうだの飲みに行こうだのあれこれ言っていたサムのことを思いだした。そのうちそのうちと言っているうちに同じ日付だ。さすがにまずい気がする。仕事はまだまだ山積みだが、そろそろ連絡くらいしておこう。携帯端末を取り出すと、
『今日の夜空いてるか』
とメールを打った。
どこかいい店で一緒に食事をして、仕事の続きは帰ってから自宅ですればいい。
ちょうど熟成肉を扱うステーキハウスができたと聞いたから、行ってみようか。赤身肉なら脂肪分も少ないし、ここのところかなり控えていたからたまにはボリュームのあるものを取ろう。
だが、思うようには行かないものだ。
デートも狩もとんとご無沙汰な事態にも相手がふて腐れていないのはよかったが、大喜びの絵文字だらけのメールを瞬時に返してきたでかいバイトは、ディーンが何を言おうと頑として聞き入れず、部屋に押しかけてきてしまった。
一か月以上音沙汰の無かった相手からやっと連絡が来たと思ったら、
「部屋は散らかってるから外で会おう」
などとという。もちろんサムは「気にしないから」の一点張りで押し切った。
だが、久々の部屋に入って納得した。スタイリッシュなデザインのリビングはシャツや書類が雑多にちらかり、部屋の隅にはクリーニング店の袋が積み上がっている。極めつけは狩用に買った塩の袋と油のタンクが表に出たままだ。
確かにこれは相当だ。
「だから言っただろう」
バッグを下ろしながらディーンが憮然とした声をだす。
「座るなら自分で座る場所を作れよ」
「はいはい」
しかしディーン・スミスとしては有り得ない惨状も、単に独身男の部屋と思えばそれほど酷いわけではない。ダイニングテーブルの上もカップやグラスがいくつか乗っているくらいだし、生ごみが放置されているわけでもない。書類をまとめて重ね、食器はシンクに、衣類はランドリーバッグに突っ込むと、ソファに座って食事をするくらいのスペースはできた。
「ブルドーザーみたいな片付け方だな」
「あんたは分類だの順番だの細かすぎ」
サムはディーンのぼやきを受け流しながらサイドテーブルの上に買ってきた食べ物を並べる。
「給料後だからいい店に連れて行ってやろうと思っていたのに」
「いいよ。高い店って肩がこるし」
それに、外だとこんなこともできないしさ。そう言いながら隣に座ると、ディーンが「ああ」と言いたげな顔をする。
「全然考えなかった?」
それは結構微妙だ。
「いや、顔は見られるし話しもできるし」
それだけでもいいかなと思ってた。ディーンはそう言いながらサムの肩に凭れかかってくる。
「そっか」
めずらしく可愛いことを言われているような気もしてきて、そっと相手の肩に手を回すサムは、もちろん今ディーンの頭の中にあるのが、
(ステーキ店に行きたかった)
(しかしさすがに今それを言ったらまずい)
であることまでは気付きようがなかった。
何が書きたかったか見失った…
[17回]
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